警備業法は警備業務を適正に行うための法律として、警備会社や警備員の活動を規制しています。2024年には大きな改正が施行され、認定証に関する変更や手続きの簡素化が進められました。本記事では、警備業法の基本から2024年の改正内容、そして警備会社がどのように対応すべきかを詳しく解説します。特に、法令遵守のためのシステム活用についても触れていきます。
警備業法の基本と目的
警備業法は、警備業務の適正な実施を確保し、警備業の健全な発展を図るための法律です。1972年に制定され、社会の安全と秩序維持に貢献してきました。
この法律の主な目的は、犯罪や事故の防止を目的とした警備業務の運営に関する規則を定めることにあります。警備会社が適切なサービスを提供し、社会の安全に寄与できるよう、様々な規制が設けられています。
警備業の定義
警備業法では、警備業を「他人の需要に応じて行う警備業務」と定義しています。この警備業務は主に4つの種類に分類され、それぞれに応じた資格や教育が必要となります。
警備業を営むためには、警備業法に基づいて各都道府県公安委員会から認定を受ける必要があります。認定なしに警備業を営むことは違法となり、厳しい罰則の対象となります。
警備業法の主な役割は以下になります。
- 警備業の健全な発展と質の確保
- 警備員の資質向上と教育制度の確立
- 社会の安全と秩序維持への貢献
- 警備サービスの受益者保護
警備業務の4つの分類
警備業法では、警備業務を以下の4つに明確に分類しています。それぞれの業務には専門的な知識と技術が求められます。
- 1号業務(施設警備):施設における盗難等の事故の発生を警戒・防止する業務
- 2号業務(雑踏警備):人や車両の雑踏の整理、交通誘導を行う業務
- 3号業務(運搬警備):運搬中の現金、貴金属、美術品等の盗難を防止する業務
- 4号業務(身辺警備):人の身体に対する危害の発生を警戒・防止する業務
各業務には固有のリスクと対応方法があり、警備会社はこれらを適切に理解し、対応できる体制を整える必要があります。特に2号業務(交通誘導警備)は多くの警備会社が手がける業務であり、交通事故防止という重要な社会的役割を担っています。
2024年警備業法改正の重要ポイント
2024年4月1日から施行された警備業法の改正は、デジタル化の推進と業務効率化を目指す内容となっています。この改正により、警備業界にとって大きな変化がもたらされました。
認定証廃止と標識掲示への変更
今回の改正で最も大きな変更点は、これまで公安委員会から発行され営業所ごとに掲示していた「認定証」(紙)が廃止されたことです。
廃止された紙の認定証に代わり、各事業者が自ら「標識」を作成し、本社・主たる営業所など見やすい場所へ掲示することが新たに義務付けられました。これにより、ペーパーレス化と手続きの簡素化が図られています。
さらに、自社Webサイト上にも同じ標識情報を掲載し、公衆がインターネット経由で閲覧できるようにする必要があります。この変更は、情報公開の透明性向上を目的としています。
改正前と改正後は以下のように変わっています。
| 改正前 |
|
|---|---|
| 改正後 |
|
関連手続きと用語の変更
認定証そのものの廃止に伴い、関連する手続きや用語にも変更がありました。これまでの「認定証書換え申請」や「認定証再交付申請」などの手続きも廃止されています。
また、「認定証番号」は「認定番号」へと表記が変更されるなど、関連する用語にも変更が加えられました。警備会社は社内規程や契約書類等の関連文書について、新しい用語への修正対応が必要です。
| 旧用語 | 新用語 |
|---|---|
| 認定証 | 認定 |
| 認定証番号 | 認定番号 |
| 認定証書換え申請 | (廃止) |
| 認定証再交付申請 | (廃止) |
警備会社が対応すべき実務ポイント
2024年の警備業法改正に伴い、警備会社は具体的にどのような対応が必要なのでしょうか。法令遵守のために押さえておくべき実務ポイントを解説します。
標識の作成と掲示
改正後は、各警備会社が内閣府令で定める様式に従って標識を作成し掲示する必要があります。標識には、会社名、代表者名、認定番号、認定年月日などの必要事項を記載します。
標識は本社や主たる営業所など、公衆の見やすい場所に掲示する必要があります。これまでのように営業所ごとではなく、主要拠点への掲示となる点が変更点です。
標識の掲示を怠ると、30万円以下の罰金が科される可能性があります。さらに、罰金刑を受けた場合は欠格事由に該当し、最長5年間は警備業を営むことができなくなるため、確実な対応が求められます。
Webサイトでの情報公開
標識情報は、物理的な掲示に加えて、自社のWebサイト上でも公開する必要があります。これにより、誰でもインターネットを通じて警備会社の基本情報を確認できるようになります。
Webサイトには以下の情報を掲載する必要があります。
- 商号、名称または氏名
- 法人の場合は代表者の氏名
- 主たる営業所の所在地
- 認定番号
- 認定年月日
- 認定を受けている警備業務の区分
Webサイトでの情報公開は、警備会社の透明性を高め、顧客からの信頼獲得にもつながる重要な対応です。サイト更新が滞らないよう、担当者を明確にしておくことをお勧めします。
社内文書の更新と教育
警備業法改正に伴い、社内の各種文書や契約書類などで使用されている用語の更新が必要です。特に「認定証」から「認定」、「認定証番号」から「認定番号」への変更は確実に行いましょう。
また、社員への教育も重要です。改正内容を全社員に周知し、特に顧客対応を行う社員には新しい制度について正確に説明できるよう教育を行うことが求められます。
以下のチェックリストを参考に社内文書更新を確認しましょう。
- 会社案内パンフレット
- 契約書類(契約書、重要事項説明書など)
- 社内規程類(就業規則、業務マニュアルなど)
- 名刺、社員証
- 見積書、請求書のテンプレート
変わらない警備業法の基本的義務
2024年の改正で変更された点がある一方で、警備業法の基本的な義務は変わっていません。引き続き遵守すべき重要事項について確認しておきましょう。
指導教育責任者の選任と配置
警備業法では、営業所ごと、かつ取り扱う警備業務の区分ごとに、指導教育責任者を選任・配置することが義務付けられています。指導教育責任者は、警備員に対する教育指導の中心的役割を担います。
指導教育責任者になるには、一定の実務経験と公安委員会が実施する指導教育責任者講習の修了が必要です。法定の資格要件を満たさない人物を指導教育責任者に選任することはできません。
指導教育責任者は、新任教育や現任教育などの法定教育の実施や、警備員指導教育計画の作成など重要な役割を担っています。適切な人材の選任と継続的な能力向上が求められます。
警備員教育の実施義務
警備業法では、警備員に対する教育が義務付けられています。主な教育は以下の通りです。
- 新任教育:警備業務に従事する前に実施する基本教育(最低15時間)
- 現任教育:年1回以上実施する継続教育(最低8時間)
- 特別な教育:機械警備業務や空港保安検査業務など特定業務に従事する警備員への追加教育
教育内容や時間数は警備業法施行規則で細かく規定されており、これを遵守しなければなりません。教育内容は座学だけでなく、実技訓練も含まれており、警備員の実践的なスキル向上が求められています。
契約に関する義務
警備業務の契約に関しても、警備業法で様々な義務が定められています。主な義務としては、以下のようなものがあります。
- 重要事項説明書の交付:契約締結前と締結時の2回にわたり、法定の重要事項説明書を交付する義務
- 書面による契約:警備業務の契約は書面によって行う義務
- 契約内容の明確化:警備業務の内容や実施方法、料金等を明確にする義務
これらの契約関連の義務は、顧客保護と適正な業務実施のために重要です。契約書類は法令に準拠した内容で、定期的な見直しを行うことをお勧めします。

よくある警備業法違反と対策
警備業法違反は、営業停止や罰金など厳しい処分につながります。ここでは、実際によく発生する違反事例とその対策について解説します。
誤った契約形態による違法行為のリスク
警備業法では、他社からの警備員派遣に関して厳格な規制があります。適切な契約関係なしに他社の警備員を使用することは、違法派遣として処罰の対象となります。
警備業における派遣は、労働者派遣法と警備業法の両方の規制を受けるため、特に注意が必要です。警備業務を行う場合、基本的には自社の警備員を使用することが原則です。
違法派遣を防ぐためには、業務委託と派遣の違いを明確に理解し、適切な契約形態を選択することが重要です。不明点がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。
違法派遣を防ぐためのチェックポイントは以下です。
- 業務委託契約の場合、指揮命令は委託先が行う
- 警備員の上下番管理は所属会社が行う
- 制服や備品は所属会社のものを使用する
- 適切な契約書を作成し、内容を遵守する
- 法令改正に注意し、契約内容を定期的に見直す
警備員教育の怠り
警備員に対する法定教育の不実施は、警備業法違反の中でも特に多い事例です。新任警備員に必要な教育を行わずに業務に就かせた場合、営業停止処分などの厳しい処分が下されます。
教育懈怠の違反を防ぐためには、以下の対策が有効です。
- 教育実施計画の策定と確実な実行
- 教育実施記録の適切な保管(最低3年間)
- 教育内容の充実と法令に則った時間の確保
- 教育担当者の育成と指導教育責任者の資質向上
教育記録は監査や立入検査の際に確認される重要書類です。記録の整備と適切な保管を徹底しましょう。
教育実施簿の虚偽記載
警備員が実際には教育を受けていないにもかかわらず、教育済みと偽って記録することは重大な違反です。虚偽記載が発覚した場合、罰金刑や営業停止処分が科される可能性があります。
教育実施簿の虚偽記載を防ぐためには、教育の実施体制を整え、確実に教育を行うことが基本です。また、教育実施の証拠として、以下のような記録を残すことも有効です。
- 教育実施時の写真や映像
- 受講者の署名入り出席簿
- 教育テストの実施と結果記録
- 教育資料の保管
虚偽記載は組織的な問題に発展する可能性があるため、コンプライアンス意識の徹底と定期的な内部監査が重要です。
警備業法違反に対する罰則
警備業法に違反した場合、どのような罰則が科されるのでしょうか。ここでは、違反行為に対する罰則の種類と内容について解説します。
営業停止処分
警備業法違反が重大な場合、公安委員会は営業停止処分を命じることができます。営業停止処分は、違反の内容や程度に応じて、期間が決定されます。
営業停止処分を受けると、指定された期間中は警備業務を行うことができなくなり、企業の信用やビジネスに大きな影響を与えます。特に、主要顧客との契約継続が困難になるなど、長期的な経営への打撃となります。
営業停止の期間は違反内容によって異なりますが、例えば無認定営業や法令遵守義務違反などの重大な違反の場合、最長で1年間の営業停止処分が科される可能性があります。
罰金刑と欠格事由
警備業法違反には、罰金刑が科されることがあります。罰金の上限は違反内容によって異なりますが、多くの場合は100万円以下となっています。
さらに重要なのは、罰金刑を受けると欠格事由に該当し、5年間は警備業を営むことができなくなるという点です。つまり、一度の違反が長期にわたる事業継続の危機につながる可能性があります。
罰金刑は個人だけでなく法人にも科される可能性があり、両罰規定により会社と責任者の両方が処罰される場合もあります。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 無認定営業 | 2年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
| 名義貸し | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
| 教育義務違反 | 30万円以下の罰金 |
| 契約書面不交付 | 30万円以下の罰金 |
| 標識不掲示 | 30万円以下の罰金 |
指示処分と是正勧告
比較的軽微な違反に対しては、公安委員会から指示処分や是正勧告が行われることがあります。これらは直接的な罰則ではありませんが、従わない場合はより厳しい処分につながる可能性があります。
指示処分は文書で通知され、具体的な改善事項と期限が示されます。指示に従わない場合は営業停止処分に発展する可能性があるため、真摯に対応する必要があります。
是正勧告は指示処分よりもさらに軽い措置ですが、警備会社としては迅速に対応し、再発防止策を講じることが重要です。違反の初期段階で適切に対応することで、より重い処分を回避できます。
警備会社が直面する法令遵守の課題
警備業法を遵守することは、警備会社にとって最優先事項ですが、実務上はさまざまな課題に直面します。ここでは、警備会社が法令遵守において直面する主な課題と対策について考えます。
警備員の人数管理の難しさ
多くの警備会社では、数十人から数百人の警備員を抱えており、その上下番管理や教育履歴の管理が大きな課題となっています。特に、アルバイトや非正規雇用の警備員が多い場合、管理はさらに複雑になります。
人数が多くなるほど、教育実施状況の把握や必要書類の管理が煩雑になり、法令違反のリスクが高まります。特に繁忙期には、教育の実施が後回しになるケースも見られます。
この課題に対処するためには、管理体制の整備と、可能な限りのデジタル化・システム化が有効です。警備員ごとの教育履歴や資格情報をデータベース化し、教育計画と実績を一元管理することで、漏れや遅延を防ぐことができます。
警備員管理の主な課題は以下です。
- 多数の警備員の上下番管理
- 教育実施状況の追跡
- 資格の有効期限管理
- 人員配置と法定配置基準の遵守
- 非正規雇用者の管理
- 現場ごとの教育要件の違い
業務負荷と法令遵守のバランス
警備会社は日々の警備業務に加えて、営業活動や人員配置、顧客対応など多岐にわたる業務を行っています。こうした状況下では、法令遵守のための業務が後回しになりがちです。
特に中小規模の警備会社では、専任のコンプライアンス担当者を置くことが難しく、現場責任者や管理職が法令遵守業務も兼務するケースが多く見られます。その結果、業務の優先順位付けが難しくなります。
業務負荷と法令遵守のバランスを取るためには、業務の効率化と優先順位の明確化が重要です。特に法令遵守に関わる業務は、「重要だが緊急ではない」と位置付けられがちなため、計画的に取り組む仕組みづくりが必要です。
法改正への対応
警備業法や関連法令は定期的に改正されるため、最新の法令内容を把握し、業務に反映させることも重要な課題です。法改正の情報収集から社内への周知、実務への反映までのプロセスを確立する必要があります。
法改正への対応が遅れると、知らないうちに違反状態になってしまうリスクがあります。特に2024年の改正のような大きな変更の場合、対応の遅れは重大な問題につながる可能性があります。
この課題に対処するためには、警備業協会などの業界団体からの情報収集や、専門家との連携が有効です。また、定期的な社内研修や情報共有の場を設けることで、法改正への対応力を高めることができます。
警備業法遵守のための管理システム活用
警備業法の遵守を確実にするためには、効率的な管理システムの活用が鍵となります。特に警備業に特化したシステムの導入は、法令遵守と業務効率化の両立に大きく貢献します。
警備業務管理システムの必要性
警備業務は多くの人員と複雑なシフト管理、厳格な教育要件など、管理すべき事項が多岐にわたります。これらを手作業や一般的な業務ソフトで管理するには限界があります。
警備業に特化した管理システムは、警備業法の要件に沿った機能を備えており、法令遵守をサポートします。例えば、シフト管理や法定書類の作成支援など、警備業特有の要件に対応した機能が実装されています。
また、クラウド型のシステムであれば、現場からのリアルタイム報告や、複数拠点での情報共有も容易になります。これにより、本社と現場の連携が強化され、法令遵守の徹底につながります。
システム導入のメリット
警備業務管理システムを導入することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 教育記録の一元管理:警備員ごとの教育履歴を一元管理し、法定教育の漏れを防止
- 上下番管理の効率化:現場からのリアルタイム報告により、正確な上下番記録を維持
- シフト管理の最適化:警備員の資格や教育状況を考慮した適切な人員配置が可能
- 法定書類の自動作成:契約書や重要事項説明書などの法定書類を効率的に作成
- アラート機能:教育期限や資格更新のタイミングを自動通知
特に教育記録の管理は警備業法遵守の要となるため、システムによる自動管理は非常に有効です。教育実施予定と実績の差異を可視化し、法定教育の確実な実施をサポートします。
システム導入による法令遵守の強化ポイントは以下です。
- 教育計画と実績の可視化
- 警備員ごとの資格情報一元管理
- 現場配置と法定要件の整合性チェック
- 法定書類の作成支援と保管
- 監査対応のための証跡保存
- 法改正情報の提供とシステム更新
プロキャス警備の活用方法
警備業法遵守のための管理システムとして、プロキャス警備は多くの警備会社で活用されています。プロキャス警備は警備業界特化型の労務管理システムとして、警備業法の要件に沿った機能を提供しています。
プロキャス警備の主な機能と警備業法遵守への貢献は以下の通りです。
- 上下番管理:スマートフォンアプリでの上番・下番報告により、正確な上下番を維持
- シフト管理:警備員の資格や教育状況を考慮した適切な人員配置をサポート
- 契約書類管理:電子化・一元管理により、法令遵守をサポート
- GPS機能:現場での正確な位置情報記録により、適切な警備業務の実施を証明
特に2024年の法改正に対応した、最新の法令に対応した機能も順次アップデートされています。クラウド型のシステムであるため、法改正があった場合も迅速に対応可能です。
まとめ
本記事では、警備業法の基本から2024年改正のポイント、そして法令遵守のための実践的な対策まで解説してきました。警備業法は警備会社の事業運営の基盤となる法律であり、確実な遵守が求められます。
- 警備業法は警備業務の適正な実施を確保するための基本法で、4つの業務区分ごとに適切な資格と教育が必要
- 2024年改正では認定証が廃止され、各事業者が標識を作成・掲示する制度に変更された
- 警備業法違反には営業停止や罰金など厳しい罰則があり、企業の存続に関わる重大リスクとなる
- 教育記録の管理や人員配置など、多くの警備会社が法令遵守の課題を抱えている
- 警備業務管理システムの活用は、法令遵守と業務効率化の両立に有効な解決策となる
警備業法を確実に遵守するためには、最新の法改正情報を把握し、社内体制を整えることが重要です。特に多くの警備員を抱える会社では、管理の効率化が法令遵守の鍵となります。プロキャス警備のような専門システムを活用することで、法令遵守の負担を軽減しながら、警備業の健全な発展に貢献できるでしょう。

