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警備会社が守るべき警備業法とは?違反事例なども紹介

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警備業法は警備会社にとって事業運営の根幹となる法律です。しかし、その内容や具体的な違反事例、最新の改正情報などについては、多くの警備会社が十分に理解していないケースもあります。本記事では、警備業法の基本から改正ポイント、違反した場合のリスク、そして法令遵守と業務効率化を実現するためのシステム導入まで、警備会社のための実践的な情報をご紹介します。

警備業法とは?4つの警備業務の定義と目的

警備業法は、1972年に制定された法律で、警備業務の適正な実施を確保し、その結果公共の安全に寄与することを目的としています。警備会社が営業するためには、この法律に基づいた認定を受ける必要があります。

警備業法では、警備業務を4つの号に分けて定義しています。各業務によって必要な資格や遵守すべき規則が異なるため、自社が行う業務がどの号に該当するかを正確に理解することが重要です。

警備業法が定める4つの警備業務

警備業法では、警備業務を明確に4つのカテゴリーに分類しています。それぞれの業務内容を正確に理解することは、適切な警備サービス提供の第一歩となります。

1号警備業務(施設警備)オフィスビル、商業施設、工場、住宅などにおいて、盗難や火災などの事故発生を警戒し防止する業務
2号警備業務(交通誘導・雑踏警備)工事現場、イベント会場などでの車両や人の誘導、事故防止を行う業務
3号警備業務(運搬警備)現金、貴金属、美術品、危険物などの貴重品や重要物の安全な運搬を行う業務
4号警備業務(身辺警備)要人や著名人など特定の人物の身体に対する危害の発生を警戒し、防止する業務

これらの業務を行うには、それぞれに適した資格を持つ警備員を配置する必要があります。特に2号業務(交通誘導)や3号業務(運搬警備)では、法定の検定合格者の配置が義務付けられている点に注意が必要です。資格を持たない警備員を配置することは法律違反となります。

警備業法の目的と意義

警備業法が制定された背景には、民間の警備業が社会に与える影響の大きさがあります。民間警備員は警察官ではないものの、公共の安全や秩序維持に関わる重要な役割を担っています。

警備業法の主な目的は以下の3点です。

  • 警備業務の適正な実施を確保すること
  • 警備業の健全な発展を図ること
  • 公共の安全に寄与すること

警備会社は利益追求だけでなく、社会の安全という公共的使命を担っているという認識を持つことが重要です。警備業法はその責任を果たすためのフレームワークを提供しているのです。

警備業法に基づく警備会社の主な義務と遵守事項

警備業法では、警備会社が遵守すべき様々な義務が定められています。これらの義務を理解し実践することは、法的リスクを回避するだけでなく、警備会社としての信頼性向上にもつながります。

営業に関する主な義務

警備業を営むためには、まず公安委員会からの認定を受ける必要があります。認定を受けた後も、様々な義務が課されています。

  • 警備業の認定申請・更新手続き
  • 営業所ごとの管理者の選任・届出
  • 標識の掲示(2024年4月改正により認定証から標識へ変更)
  • 変更届出(会社名や所在地、警備員数などの変更時)
  • 年間実績報告書の提出
  • 契約内容の書面による明示

特に2024年4月の改正により、従来の「認定証」は廃止され、代わりに「標識」の掲示が義務付けられました。この標識は主たる営業所の見やすい場所に掲示する必要があります。また関連語句も「認定証」から「認定」に、「認定証番号」は「認定番号」に変更されています。

警備員の教育・研修に関する義務

警備業法では、警備員に対する教育・研修が義務付けられています。これは単なる形式ではなく、実質的な教育内容の実施が求められています。

  • 新任教育(15時間以上)
  • 現任教育(年間10時間以上)
  • 特別な教育(機械警備業務や交通誘導警備業務など特定の業務)
  • 教育実施簿の作成・保管(3年間)

警備員教育は形式的に行うのではなく、実際に定められた時間と内容で実施し、その記録を適切に保管することが求められます。教育実施簿の虚偽記載は重大な違反となり、罰則の対象となる可能性があります。

警備員の資格要件と配置基準

警備業法では、警備員として働くための資格要件と、業務に応じた配置基準が定められています。

欠格事由成年被後見人、刑法犯罪者、暴力団関係者など一定の条件に該当する人物は警備員になれません
教育・研修すべての警備員は新任教育を受ける必要があります
検定資格特定の業務(交通誘導警備業務など)には検定合格者の配置が必要です

特に検定資格については、業務内容によって必要な資格が異なります。2号業務の交通誘導警備では交通誘導警備業務検定の合格者を、3号業務の運搬警備では貴重品運搬警備業務検定の合格者を配置する必要があります。この規定を守らずに無資格者を配置することは、違反として厳しく取り締まられます。

2024年警備業法改正の重要ポイント

2024年4月1日より、警備業法が改正され、いくつかの重要な変更点が施行されました。警備会社はこれらの変更に適切に対応する必要があります。

認定証の廃止と標識の義務化

改正前は警備業の認定を受けた事業者は「認定証」を交付され、その掲示が義務付けられていました。しかし改正後は認定証が廃止され、代わりに「標識」を作成し掲示することが義務化されています。

この変更により、以下の手続きも廃止されました。

  • 認定証の書換え手続き
  • 認定証の再交付手続き

標識には「認定番号」「警備業者名」「営業所所在地」などの情報を記載し、主たる営業所の見やすい場所に掲示する必要があります。標識の様式は公安委員会によって定められており、これに従って作成しなければなりません。

関連語句の変更と実務への影響

法改正に伴い、いくつかの関連語句も変更されました。主な変更点は以下の通りです。

変更前変更後
認定証認定
認定証番号認定番号

これらの変更は単なる用語の変更にとどまらず、実務にも影響します。例えば、各種書類やウェブサイト、名刺などに記載されている「認定証番号」は「認定番号」に変更する必要があります。また、これまで認定証を提示することで警備業者であることを証明していた場合、新たな対応が必要となります。

警備業法違反の主な事例と罰則

警備業法に違反した場合、行政処分や罰則の対象となります。違反を未然に防ぐためにも、典型的な違反事例とその罰則について理解しておくことが重要です。

よくある違反事例

警備業法違反の事例は多岐にわたりますが、特によく見られる違反には以下のようなものがあります。

  • 無資格者による警備業務の実施
  • 教育・研修の未実施または虚偽記録
  • 変更届出の未提出
  • 契約内容の書面不提示
  • 警備員の権限を超えた行為(不当な拘束など)

特に多いのが無資格者による業務実施と教育・研修関連の違反です。必要な検定資格を持たない警備員を配置したり、法定の教育時間を確保せずに形式的な研修で済ませたりする違反が散見されます。これらは摘発された場合、厳しい処分の対象となります。

違反した場合の罰則と行政処分

警備業法違反に対しては、違反の内容や程度に応じて様々な罰則や行政処分が設けられています。

主な罰則

  • 2年以下の懲役または100万円以下の罰金(無認定営業など)

  • 1年以下の懲役または100万円以下の罰金(欠格者の配置など)

  • 6月以下の懲役または50万円以下の罰金(名義貸しなど)

  • 30万円以下の罰金(教育実施簿の虚偽記載など)


主な行政処分
  • 認定の取消し(5年間は営業不可)
  • 営業停止命令(最長1年間)
  • 指示処分(改善命令)
  • 始末書の提出

特に重大な違反や繰り返し違反した場合は、認定取消しや営業停止などの厳しい処分の対象となります。これらの処分情報は公表され、企業イメージに大きなダメージを与えるだけでなく、取引先からの信頼喪失にもつながる可能性があります。

実際の処分事例から学ぶ

実際の処分事例を知ることは、同様の違反を防ぐために役立ちます。以下に典型的な処分事例をいくつか紹介します。

  • A社事例:検定合格者が不在の状態で交通誘導警備を実施し、3ヶ月の営業停止処分
  • B社事例:教育実施簿に虚偽記載(実際には教育未実施)を行い、指示処分および始末書提出
  • C社事例:警備員による過剰な権限行使(私的な拘束行為)により、営業停止処分
  • D社事例:無認定で営業を継続したため、刑事告発および罰金刑

これらの事例から分かるように、たとえ意図的でない場合でも、法令遵守を怠れば厳しい処分の対象となります。特に組織的・継続的な違反は重い処分につながりやすいため、コンプライアンス体制の構築が不可欠です。

警備業法遵守のための実践的対策

警備業法の違反を防ぎ、適正な警備業務を行うためには、具体的な対策を講じる必要があります。以下では、警備会社が実践すべき対策を紹介します。

社内管理体制の整備

警備業法遵守の第一歩は、適切な社内管理体制の整備です。組織全体で法令遵守の意識を高めるための取り組みが重要です。

  • コンプライアンス担当者の選任
  • 社内マニュアルの整備と定期的な更新
  • 定期的な内部監査の実施
  • 法改正情報の収集と周知体制の構築

特に警備業法は定期的に改正されるため、最新の法令情報を常に把握し、必要に応じて社内体制を見直すことが重要です。警備員や管理者向けの教育プログラムにも、最新の法令情報を反映させましょう。

教育・研修の充実と記録管理

警備員の教育・研修は、法令で義務付けられているだけでなく、質の高い警備サービスを提供するためにも欠かせません。形式的な研修ではなく、実質的な効果を上げる研修を心がけましょう。

教育・研修のポイント実施内容
新任教育法定15時間以上の教育を確実に実施し、内容の充実を図る
現任教育年間10時間以上の継続教育を計画的に実施
記録管理教育実施簿を正確に記録し、3年間保管
効果測定テストや実技確認で教育効果を測定

システム導入による業務効率化と法令遵守の両立

警備業務の管理を効率化するためには、システム導入が非常に役立ちます。特に警備業界特化型の労務管理システム「プロキャス警備」は、業務効率化に大きく貢献します。プロキャス警備の主な機能は以下のようになっています。

  • シフト管理機能:希望シフトや勤務状況を元に最適なシフト作成
  • 上番・下番報告機能:上番・下番をボタン1つで報告
  • 給与計算機能:勤務実績に基づく給与計算を自動化
  • 請求書発行機能:業務完了後の請求書を迅速に作成

隊員配置から上番・下番報告、シフト管理、給与計算、請求書発行までをトータルに管理でき、法令遵守と業務効率化の両立に役立ちます。地図アプリとの連動やチャット機能、警備報告書のデジタル提出機能なども備えており、現代の警備業務に必要な機能が充実しています。

警備業法の最新動向と今後の展望

警備業法は社会情勢や技術の進化に合わせて改正されてきました。最新の動向を把握し、将来の変化に備えることも警備会社として重要です。

技術革新と警備業法の変化

警備業界にもテクノロジーの進化が大きな影響を与えています。AI、ドローン、IoTなどの新技術の導入によって、警備業務のあり方も変わりつつあります。

例えば、監視カメラとAI画像認識技術を組み合わせた「AI警備」や、ドローンを活用した「空中警備」など、従来の人的警備とは異なる形態が登場しています。これらの新技術の活用に関しても、個人情報保護や航空法などの関連法規と合わせて警備業法上の位置づけを理解することが重要です

今後も技術の進化に合わせて法規制も変化していくことが予想されるため、常に最新情報を収集し、適切に対応する準備が必要です。

社会的ニーズの変化と警備業の役割

少子高齢化や働き方改革、大規模災害の増加など、社会環境の変化に伴い、警備業に求められる役割も変化しています。単なる警戒・監視だけでなく、高齢者支援や災害時の避難誘導など、より広範な社会的役割が期待されるようになっています。

こうした社会的ニーズの変化に対応するため、警備員の資質向上や多様なサービス提供が求められており、それに応じた法整備も進められています。特に2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機に、警備業のプロフェッショナリズム向上や国際水準への対応が進んでいます。

警備業が社会インフラとしての役割を果たすためには、こうした変化に柔軟に対応していくことが不可欠です。法令遵守はもちろん、社会的責任を果たすという視点も持ちながら、警備業務を展開していくことが重要です。

まとめ

本記事では、警備業法の基本から違反事例、最新の改正情報、そして遵守のための実践的対策まで幅広く解説しました。警備業法は警備会社の事業運営の基盤となる法律であり、その遵守は単なる義務以上の意味を持ちます。

  • 警備業法は4つの警備業務を定義し、それぞれに適した資格や教育を義務付けている
  • 2024年4月の改正では認定証が廃止され、標識の掲示が義務化された
  • 無資格者の配置や教育実施簿の虚偽記載などの違反は厳しい処分の対象となる
  • 法令遵守のためには、社内管理体制の整備や教育・研修の充実、システム導入による業務効率化が効果的
  • 技術革新や社会的ニーズの変化に対応した警備業の発展が求められている

警備業法の遵守と業務効率化を両立させるためには、警備業界特化型の労務管理システム「プロキャス警備」の導入が効果的です。隊員配置から給与計算まで一元管理でき、現場とのリアルタイムコミュニケーションも可能です。報告書のデジタル提出にも対応しており、法令遵守と業務効率化の両立をサポートします。