派遣会社の経理担当の方で短期派遣で勤務したスタッフに対しても、源泉徴収票が必要なのか迷う方は多いでしょう。「短期間だけだから必要ないのでは?」と思われがちですが、実は短期間の就労でも源泉徴収票は重要な書類です。本記事では、短期派遣における源泉徴収票の必要性や例外ケース、社内での管理体制の整備について詳しく解説します。
短期派遣と源泉徴収票の基本知識
短期派遣スタッフに対しても、源泉徴収票は原則として発行義務のある書類です。まずは発行者として基本的な知識を確認しましょう。
源泉徴収票とは何か
源泉徴収票とは、1年間に支払われた給与の総額や、給与から天引きされた所得税額などが記載された書類です。確定申告や年末調整の際に必要となる重要な書類であり、給与支払者(派遣会社など)は法律で発行が義務付けられています。
この書類には、支払金額、源泉徴収税額、社会保険料などの控除項目を記載する必要があり、会社が発行することでスタッフの所得を公的に証明するものとなります。短期派遣であっても、所得税を源泉徴収している場合は源泉徴収票を発行するのが原則です。
短期派遣でも発行義務はあるのか
結論から言うと、短期派遣であっても源泉徴収票の発行義務は原則としてあります。給与を支払う会社は、雇用期間の長さに関わらず、給与を支払ったすべての従業員について源泉徴収票を作成・交付する義務があるのです。
たとえ1ヶ月未満や数日間だけの単発・短期派遣であっても、企業側には源泉徴収票交付義務があります。ただし、一部例外もあるため、詳細は後述します。短期間の就労であっても交付義務があるため、スタッフの勤務記録と支払履歴を正確に把握し、必要に応じて源泉徴収票を作成・提供できる体制を整えておくことが重要です。
発行対象外となるケース
一部のケースでは源泉徴収票が発行されないことがあります。具体的には以下のようなケースです。
- 日給9,300円未満の日雇い労働(源泉徴収の対象外となる場合)
- 報酬ではなく、交通費や実費のみの支給の場合
しかし、これらの条件に当てはまる場合でも、実際には源泉徴収が行われていることが多いです。スタッフから問い合わせがあった場合に対応できるよう、支払記録や税務データを正確に管理しておくことが求められます。
短期派遣スタッフの年末調整と源泉徴収票の関係
短期派遣に対する、年末調整と源泉徴収票の発行について正しく理解することが重要です。
年末調整の実施条件
年末調整は、基本的に給与所得者に適用され、その年の給与に対する税額を確定させる手続きです。派遣社員も例外ではなく、原則として源泉徴収が実施されています。
年末調整を実施する条件としては、12月末時点でその会社に在籍していることが一般的です。短期派遣の場合でも、12月末に在籍しているスタッフに対しては、年末調整を実施し、翌年1月末までに源泉徴収票を発行する必要があります。
ただし、年の途中で退職したスタッフについては、当社では年末調整を行えません。そのため、自身で確定申告を行う必要がある旨を、退職時に適切に案内する必要があります。
年末調整に対応できない場合の対処法
年末調整に対応できない派遣会社の場合や、年内に退職した場合は、派遣スタッフ本人に確定申告を通じて税金を精算させる必要があります。その際、源泉徴収票を適切に発行し、スタッフに交付する責任があります。
年内に複数の派遣会社で勤務したスタッフから問い合わせがあった場合、会社が支払った給与分については確定申告が必要であることを説明できるよう、準備しておくことが重要です。年収や控除要件により、スタッフが確定申告を行うケースも多くなるため、その前提で源泉徴収票の交付スケジュールを整備する必要があります。
| 在籍状況 | 年末調整/源泉徴収票 |
|---|---|
| 12月末時点で在籍 | 派遣会社が年末調整を実施、翌年1月末までに源泉徴収票発行 |
| 年内に退職 | 年末調整は実施せず退職後1ヶ月以内に源泉徴収票発行、スタッフ側で確定申告 |

短期派遣スタッフへの源泉徴収票の適切な交付フロー
短期派遣スタッフに源泉徴収票を確実に交付するためには、発行から交付までのフローを社内で確立しておくことが重要です。
一般的な交付時期と方法
年末調整を行ったスタッフへは、翌年1月下旬を目処に源泉徴収票を交付します。交付方法は、以下のパターンを想定し、社内ルールを定めておきましょう。
- 郵送による交付(スタッフから取得した住所宛)
- 社員向けWebサイト上での電子交付
- 本社または営業所での手渡し
入社時に正確な住所を取得し、住所変更があった場合は速やかに更新できる体制を整えておくことが重要です。
退職した場合の源泉徴収票発行
短期派遣スタッフが年内に退職した場合は、退職後1ヶ月以内に源泉徴収票を郵送するのが一般的です。この場合、年末調整は行われないため、源泉徴収票には「年末調整済」のチェックが入っていないケースが多くなります。
退職時には、源泉徴収票の発行について事前に案内するようにしましょう。特に、派遣会社のWebサイトにアクセスできなくなる可能性もあるため、退職前に担当者は以下の点を伝達しておくと安心です。
- 源泉徴収票はいつ頃発行されるか
- どのような方法で引き渡すか
退職後の住所変更があった場合は、必ず派遣会社に連絡するように説明することが大切です。
紛失した場合の再発行依頼方法
スタッフが源泉徴収票を紛失し、再発行の依頼があった場合には、企業として迅速に対応できるフローを整えておくことが望まれます。再発行の際は以下の情報を確認する必要があります。
- 氏名、生年月日、住所などの個人情報
- 派遣先の会社名や勤務期間
- 社員番号やスタッフIDなど(わかる場合)
再発行の依頼方法は、電話、メール、専用フォームなど派遣会社によって異なります。一部の派遣会社では、本人確認書類の提出を求める場合もあります。
税務署での確定申告期限(通常2月16日~3月15日)が迫っている場合は、優先的に再発行手続きを行う配慮が求められます。
源泉徴収票の発行責任とその社会的役割
源泉徴収票は、従業員の税務手続きや様々な社会生活の場面で必要とされるため、発行者である企業には正確な作成と交付が求められます。 以下に、会社が発行責任を果たすべき理由となる、主な活用事例を挙げます。
確定申告における役割
従業員が以下のケースに該当する場合、確定申告に源泉徴収票が必須となります。
- 年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合
- 複数の会社から給与を得ている場合(掛け持ち勤務)
- 給与収入が103万円を超える場合(扶養控除に影響)
- 医療費控除や住宅ローン控除などの各種控除を受けたい場合
他の行政手続きにおける役割
確定申告以外にも、従業員が以下の手続きを行う際に収入証明として必要となります。
- 住宅ローン申込時の収入証明書として
- 児童手当や保育園の申込みなど、所得証明が必要な手続き
- 国民健康保険や国民年金の保険料減免申請
- 奨学金の申請や返済猶予の手続き
源泉徴収票は税務手続きだけでなく、行政手続きや社会制度の申請などにも利用されます。会社ではスタッフが必要なタイミングで適切に入手できるよう、電子交付や再発行の仕組みを整えておくことが求められます。
将来のキャリア証明としての役割
従業員のキャリア形成においても、当社が発行する源泉徴収票は重要な意味を持ちます。
- 新たな就職活動での職歴証明
- フリーランスや個人事業主へ移行する際の実績証明
- クレジットカードや各種ローンの申込み時の収入証明
短期派遣や単発バイトであっても、キャリア形成の観点からも源泉徴収票の発行と管理は重要です。特に、将来的に就職・融資などでも使用されることを想定し、発行記録の保管体制を整えることが大切です。
プロキャスの源泉徴収票発行サポート
派遣業務に特化した労務管理システム「プロキャス」は、短期派遣スタッフに対する源泉徴収票発行もスムーズにサポートしています。
プロキャスで年末調整関連業務を効率化
プロキャスは、スタッフの勤怠と給与データを一元管理することで、年末調整と源泉徴収票作成の関連業務を大幅に効率化します。具体的には、以下のような形で貢献します。
- 年末調整の基礎データ作成:1年間の正確な勤怠実績に基づき、給与や社会保険料を自動計算。年末調整に必要となる「支払金額」や「社会保険料等の金額」の基礎データを正確に確定させ、計算ミスを防ぎます。
- 帳票作成のサポート:年末調整後の源泉徴収票など、各種法定調書の作成に必要となるデータをCSV形式などで出力可能。税務ソフトへの入力作業などを簡略化し、帳票作成業務をサポートします。
プロキャスを導入している派遣会社では、短期派遣スタッフであっても適切に勤怠管理されるため、スタッフの税務手続きがスムーズになります。
その他のプロキャス機能
プロキャスは、短期派遣における勤怠管理や税務処理を効率化する、派遣会社向けの業務システムです。
- スタッフ登録:基本情報、スキル、経歴、評価などを一元管理
- シフト作成・調整:希望シフトや勤務ルールを基に自動で最適な人員配置を割り出し
- 勤怠管理:モバイル打刻によるリアルタイム勤怠管理
- 給与計算:勤務時間を自動で集計し、給与計算に反映
これらの機能によって、短期派遣特有の複雑な勤務管理や給与計算が効率化され、正確な源泉徴収と源泉徴収票の発行が可能になっています。特に、複数の勤務先や変動する勤務時間など、短期派遣特有の複雑さをシステムで一元管理できるのが強みです。
まとめ
短期派遣で働いた場合でも、源泉徴収票は重要な書類です。給与から所得税を徴収している場合は、原則として源泉徴収票を発行します。確定申告や各種行政手続きで必要となるため、必ず発行し適正な管理をしましょう。
- 短期派遣でも源泉徴収票は原則として発行する
- 年末まで在籍していれば年末調整を行い、翌年1月末までに源泉徴収票を発行する
- 年内に退職したスタッフには退職後1ヶ月以内に発行する
派遣業務管理システム「プロキャス」を導入している派遣会社では、短期派遣スタッフの源泉徴収票発行もスムーズに行われます。源泉徴収票の発行体制を効率化することも、企業の競争力強化に繋がるでしょう。

